第一章・怪しい投資の話

#5 ネットワークビジネス契約の日

ネットワークビジネスに契約する日

2011年の春。
投資のネットワークビジネスに入会することを決めた私は、契約の手続きをするため弟と弟を誘った友人とそしてアドバイザーの方の3人と会うことになりました。

平日の仕事を定時で上がり、早めに夕ご飯を済ませた私は弟と合流するべく車を走らせました。

緊張。

元々人と会うことには特別緊張してしまう私なので、今日も知らない人と会うということで当然のように緊張していました。
それに加えて新しい契約を結ぶのです。
「本当にいいのかな?これでいいのかな?いいんだよね?やってみるか。」
不安と緊張と期待?とが入り混じった複雑な心持ちで車のハンドルを握っていました。

弟との待ち合わせ場所に着き、しばらく車の中で待っていると弟が現れました。
弟の車に乗り換えて、会食場所まで向かいます。
会食の場所となっていたのは有名な外食チェーン店(ファミリーレストラン)です。
お店の駐車場で約束の2人と合流し軽く挨拶を済ませた後、4人でお店に入りました。

ネットワークビジネスの契約前の説明

席について再度挨拶を交わした後、軽食やドリンクを挟み会話をしました。
このネットワークビジネスでは「アドバイザー」と呼ばれる、契約をする資格を持った人が会社の説明をして、その話を聞いて契約しなければ入会できないことになっていました。
ですので今回、このような会が設けられたというわけです。

しばらく談笑した後、いよいよ本題に入りました。
レポート用紙とサインペンを使って、簡単な図や文字を書いてわかりやすく説明していただきました。

まずはこのネットワークビジネスを行っている会社についての説明がありました。
お金に関して勉強ができるよ、ということを強く押し出していたので「入会」というよりは「入学」という言葉を多く使われました。
そして「会社」ではなく「学校」というフレーズで「みんなで学んでいきましょうね」という感じで紹介されました。

  • 世の中の1割がお金持ちで後の9割は普通の人。
  • 普通に働いているだけ、普通に生活しているだけではお金に対する知識が無くて損をしていますよ。
  • お金について詳しい一部の人たちがより富を得ています。
  • 普通の人は何も知らずに生きているだけなので、そこで差が生まれていますよ。
  • お金の学校に入って、お金についての勉強をすることでより豊かな生活を送ることができるようになるかもしれません。
  • お金の学校で勉強できるこのとの1つが投資や運用についてです。
  • 入学金は21万円で、毎年の更新料に10,500円がかかります。

要約するとこのような感じでしたでしょうか。
学校を名乗っても大丈夫なのかな?という疑問に対しては、パンフレットに小さい文字で「学校教育法に定められている専修学校及び各種学校ではない」という一文はしっかり記載されていました。

一通り会社についての説明が終わり、次に今の社会情勢についての話が始まりました。

  • 今の日本の借金は●兆円もあります。一人当たり●万円です。それを背負って生きています。
  • 高齢化社会がどんどん進んでいくに加えて、自分達も長生きになるので生涯に必要なお金がたくさん必要になります。
  • 日本の税金が高いので、人もお金も企業も海外へ出て行っています。
  • 銀行に預け入れていたとしても金利がものすごく低いので、たとえば100万円入れていたとしても0.02%の利率では年間で200円しか増えません。でも海外だと●%のところもあって、100万円入れておくと、●万円も年間で利子がつく国もあります。

このような話でした。(●部はあえて伏せています。当時の金額と今現在の金額が大きく違い誤解を招く恐れのあるため)
「今の日本の社会は不安ですよね?このままではもっと不安な世の中になりそうですよね?
日本の金利ではお金は増えていかないけれども、海外だと増える国もありますよ。」ということを、リアルな数字を交えて分かりやすくすることで、その数字はより現実味を帯びてきます。
「へぇー、そうなんだ!」と納得してしまいます。

不安が煽られたところで、次はFXと投資商品の話に移っていきます。
まずFXがどういう仕組みで成り立っているのかを詳しく説明してもらえました。
FXを知らない人にとってみれば専門用語が色々出てきたので、「へぇ」となってしまいます。
なんだかよくわからないけどすごい、とテンションが上がってしまいます。
FXの仕組みの説明が終わったところで、その会社がおすすめしている投資商品の話へと移っていきます。
専用の自動売買ソフトを使って、利益を取る分と損切りする分をうまくやっているので、結果的に高い利益が出せているというお話でした。
そして、会社が直接この投資に関与しているわけでは無くて、●●さんという投資家ですごい人がいるおかげで、そのシステムを使わせてもらっているだけだということでした。
絶対にその投資をやらなければならないということでは無くて、お金について学んでいくということの一環として、投資も試してもらえるよ。といったような雰囲気で投資商品としてゴリ押ししている感じではありませんでした。
この辺りも正直きな臭い印象は受けました。
あくまでも直接的なビジネス内容としては「お金の勉強」ということになっていて、投資を売りにはしていないのは事情があるのだろうなと察しました。
(こっそりやっていて認可を受けていないのでは??やっぱり危ないやつなのでは??というような)

投資商品の話が終わると、ネットワークビジネスの根幹であるMLMの話になりました。
ここは個人的にはあまり興味がなくてどうでもよかったのですが聞きました。
「入会と商品購入・契約についてのご案内」と名のついたパンフレットを広げながらの説明でした。
パンフレットを追っていきつつ、MLMの項目にたどり着いたので、
「それっていわゆるねずみ溝ですよね?」と尋ねたら、「いや、ねずみ溝とは違います。マルチレベルマーケティングといって、ちゃんとビジネスとして成立しているものですよ」との答えが返ってきました。
そして「自分の下に人が増えていくと、それに対してこれくらいの報酬がありますよ。」というお決まりの内容でした。
報酬システムについては会社ごとに違いがあるかと思いますが、この会社での報酬システムの話を聞きました。

最後にもう一度、このネットワークビジネスに入会することのメリットの説明に入りました。

  • 「お金の学校」に入学することで知識、経験、人脈を増やすことができて、器が広げられるよ。
  • 人生において必要な考え方も身につけられるよ。
  • 人生がより豊かになっていくよ。
  • お金も増えて、自由な時間も増えて、仲間もできて、ストレスも減って、健康にも気をつかえるようになるよ。
  • 自分が豊かになると、周りにも伝えていきたくなって、伝わった人も豊かになると感謝されるという良いループが生まれますよ。
  • そういう価値を提案しています。一緒にやっていきませんか?

途中、「金持ち父さん、貧乏父さん」でお馴染みのキャッシュフロークワドラントも用いられてインベスターの箇所を強調されました。
とにかく「いいことたくさんありますよー!一緒に良い未来を作っていきませんか?」みたいな感じで締めくくられました。

一連のプレゼンテーションを終えて契約

一通り話を聞き終わって「あー、やっぱりマルチはこうだよね」という気持ちと同時に「そうなったら嬉しいよね」とも思いました。
感想を求められたので、「投資に関しては興味がありますし、お金が増えたら嬉しいですよね」ということと、「人を増やす方の活動はそんなにやる気はありません。」ということはお伝えしておきました。
しばらく雑談をしてから、契約はどうしますか?ということになったので、私はその場でOKをしました(ダメな例です)
もう契約するつもりでハンコも持って行っていたので、契約しないという選択肢は私にはありませんでした。
ここで一旦話を持ち帰って冷静になって契約は断る」ということをマルチ商法の話を断る上でのいろはとして説いていることもありますが、実際その場に居合わせるとなかなか難しいということが伺えます。
なにせもうハンコを持って行っていて契約する気しかないのですから、引き返すという思考に移るのは至難の業です。

契約書に必要事項を記入し、ハンコもさらっと押印して契約書が完成しました。
後日入会金(入学金)のお振込と連絡をお願いしますということでしたので、了承して契約終了という形になりました。
もちろんクーリングオフ制度の話もしっかりとしていただきました。

お店を出て、帰り際に誕生日ケーキをプレゼントしていただきました。
誕生日が近かったことを、きっと弟から聞いていたのでしょう。
「ありがとうございます」と喜んで頂きました。
そして帰路についたのでした。

途中までは弟と一緒に乗合で帰ったので何か雑談をしたのですが、内容までは忘れてしまいました。

今回の記事のこの内容がなぜある程度はっきりした形で書けたのかというと、当時のメモもパンフレットも全て手元に残しているからです。
全てが証拠になるかもしれないと思い、捨てずにまとめてとってありました。
このような形で役に立つとは思いもしませんでしたけれども。

弟と別れ、一人帰路についた私。
契約が無事に終わったということに対する安堵と、お金が増えるかもしれないという楽しみと、でもやっぱり怪しいんだよなという不安が入り混じる形で帰宅しました。
その日の夜はなかなか寝つけませんでした。

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