<コラム>

その住所、本当に大丈夫?投資詐欺におけるタックスヘイブンとペーパーカンパニーの役割。

タックスヘイブン

みなさんこんにちは。
かさごです。

今回は投資詐欺の手口として気をつけたいキーワードの1つをご紹介したいと思います。
それは「タックス・ヘイブン」です。

みなさんは「タックス・ヘイブン」という言葉を耳にしたことはありますでしょうか?
私自身も投資の話に勧誘されているときに初めて耳にしたくらいですので、特別投資に興味があって自分で調べている人以外はほとんど聞いたことが無いのではないでしょうか?

タックス・ヘイブンという用語自体を耳にしなければ、そのワードから意味を調べることすらできません。
ですので、詐欺師や勧誘員はこのワードを勧誘時に出して「へぇ!そんなのがあるんだ!勉強になるなー!」と興味・関心を勧誘したい相手に抱かせることが可能になります。
興味・関心が湧くと「もっと投資について知りたい!」と思いますよね?
勧誘したい相手の気を引くためにも、こういうワードは一役買っているのです。

投資詐欺に勧誘される場合、ほとんどのケースで「タックス・ヘイブン」という言葉が出てくるくらいに決まり文句になっています。
この「タックス・ヘイブン」が何なのかを理解しておくと「あ、それ前に調べて理解している危ないヤツだ!」と赤信号を灯すことができます。

ぜひこの機会に覚えておきましょう。

租税回避地(タックスヘイブン)とは

それではまずは「タックス・ヘイブン」という言葉から紐解いていきましょう。

「タックス・ヘイブン」を英語で表記すると「Tax Haven」です。
直訳すると税金避難所です。
「Heaven=天国」ではないので注意が必要です。私も最初に聞いた時は「税金天国」だと思っていました。

では一体どのような税に対して優遇措置があるのでしょうか?
主に法人税や所得税・源泉徴収税などです。
相続税や贈与税に対しても優遇されます。

私たちが今住んでいるこの日本ですが、税金軽いでしょうか?
正直重たいですよね?
日々生きていくだけで重たい税金がのし掛かってきます。
少しでも税金が掛からないようにしたいと、多くの事業主は節税対策に奔走しているのではないでしょうか?
多くの資産を持っている富裕層も税金対策に勤しんでいるのではないでしょうか?
そういった人たちが利用するのがタックスヘイブンです。
(みんながみんな利用しているわけではないです)

こうした法人税などに掛かってくる租税が無い、もしくは著しく軽減されている国や地域のことを「タックス・ヘイブン」と呼びます。
租税回避地」や「低課税地域」とも呼びます。

「自国に住んでいて高い税金を取られるくらいなら、税金の掛からない地域にお金を移しておきたい」という人間の欲望が集まる場所ともいえます。

タックス・ヘイブンを行っている国や地域が税を低くしているのには訳があり、自分の国に主要な産業がないために税制優遇措置を取ることでしか企業や個人を呼び込めないからです。
メリットを与えて企業や個人に来てもらい、経済を潤そうという戦略です。
ただし、脱税やマネーロンダリングなどの問題もあります。
(タックス・ヘイブン自体は違法ではない)

「タックス・ヘイブン」とは税金がかからない、もしくは著しく税率の低い国や地域のことです。
税金が引かれないので、手元に残るお金が大きいです。
また、「タックス・ヘイブン」の地域に銀行口座を開設してお金を入れておくことで、日本の銀行より高い利率で預けておける場合もあります。
一時期話題にあった「パナマ文書」というのを覚えておられますでしょうか?
当時ニュースにもなっていましたね。
あれは2016年の5月のことでした。
各国の企業や要人・富裕層の方が多くの資産をタックスヘイブンの地域に移し租税回避をしていました。
税金がかからないということはそれだけで魅力的なものなのです。

タックスヘイブンの地域で合法的に租税回避をしている分には手段として認めざるを得ませんが、脱税や利益移転、マネーロンダリング、犯罪組織の資金隠しなど、不法行為の温床になっているケースも少なくありません。
つまり詐欺に使われることもあるということです。

投資詐欺に出てくる代表的な租税回避地

租税回避地
タックス・ヘイブンを行っている国や地域はどのような場所があるのでしょうか?
いくつか有名な場所がありますので、もし何らかの投資の勧誘を受けた場合にそれらの土地の名称が出てきたら「この話怪しいんじゃない?」と疑ってみてください。

富裕層でもなく、ごくごく一般の平凡に生きている家庭にはほとんど耳にすることのない地名です。
「そんな場所で投資が出来るなんて!」と浮かれてはいけません。
「こんないい話が自分の所に来るなんて運がいい!」と舞い上がってしまうのではなく、「その土俵に自分が立っていないのに、なぜうまい話が来ているのか?カモにされるのでは?」と疑ってください。
厳しい言い方をしてしまいますが、たいしてお金も持っていないような人が富裕層と同じような扱い(サービス)を受けることはありません。

それでは投資勧誘詐欺によく出てくるタックス・ヘイブンを行っている国や地域を挙げてみましょう。

ケイマン諸島(イギリス領・カリブ海にある)
バージン諸島(イギリス領・カリブ海にある)

この2つの諸島の名前はよく耳にします。
(カリブ海はメキシコとかパナマの付近です。大西洋に隣接しています。インド洋ではないです。)
完全に無税である「タックスパラダイス」と呼ばれる地域に属しています。
代表的な2つですので、覚えていて損はないと思います。
もし自分のところにそういう話が来た時に「聞いたことのある島の名前だな」と思えば危険回避ができるはずです。

他にも

バハマ諸島(イギリス領・カリブ海にある)
バミューダ諸島(イギリス領・カリブ海にある)
セーシェル諸島(セーシェル共和国。インド洋、アフリカに近い。)

などがあります。
まだ他にもたくさんの地域が存在しています。

また、法人税が低い地域として

・香港
・台湾
・シンガポール
・マカオ

という地名が勧誘の時に上がってくることもあります。

「税金のかからない国で投資をしている」という話から「タックス・ヘイブン」「ケイマン諸島」「バージン諸島」などのキーワードが並んできたら危ないです。
投資詐欺だと思ってください。

ペーパーカンパニーとは

私書箱
タックス・ヘイブンに関連して「ペーパーカンパーニー」という用語も後になって耳にします。
詐欺被害に遭ってしまったという経緯から、「投資を行っていた会社はペーパーカンパニーだった」という事実を突きつけられることとなります。

詐欺師側、勧誘員側は「ペーパーカンパニー」という用語は使いません。
勧誘員自身もペーパーカンパニーであることは知らないことが多いです。
あくまでも実在している会社として勧誘を受けることになります。

まず「ペーパーカンパニー」とは何なのでしょうか?
ペーパーカンパニーは紙だけの会社です。
紙とは登記(書類)のことです。
つまり、会社として登録はしてあるけれども、事業活動・営業活動は行なっていない実態の伴っていない形だけの会社です。

活動はしていなくても「会社はある」という事実は間違っていないですからね。

詐欺師の国内での活動拠点としてはペーパーカンパニーではないことも多いです。
オフィスを借りてミーティングをしたりすることもあるようです。
ただ、場所は借りているけど固定電話を敷いていなかったりと、まちまちです。
国内でしたら、足を使ったりなどして調べることは可能です。

問題は海外の拠点です。
実際に自分で現地に行くのはなかなか難しいでしょう。
そうなると見分ける方法は住所しかありません。

タックス・ヘイブン地域での会社の場合「P.O.Box」と住所に付いていることがあります。
これ「Post Office Box」です。
つまり「私書箱」です。
私書箱の住所が登記されていることが少なくありません。

事務所もないただの郵便受けでどうやって営業活動するのでしょうね。
完全にペーパーカンパニーです。
この場合は実態がない会社だということが分かりやすいです。
実際に事務所が存在している住所で登記していることもありますので、Googleマップなどで雰囲気だけでも確認してみることをお勧めします。

ただ、詐欺師側が素直に海外の住所を教えてくれるかどうか・・・は微妙なところです。
末端の勧誘員は知らないでしょうし、知っているのは上の方のごく一部の人たちだけでしょう。

「タックス・ヘイブンの◯◯諸島に投資の会社があって、そこで取引ができるようになっている」というところまでしか話に上がらないかもしれません。
そして勧誘される側も危険意識が低いことが多いですので「所在地である住所」まで聞き出すということに思考が追いつかないことの方が多いでしょう。
しかも「租税回避地での取引事業なので税金がかからないから全て利益になる」といったような謳い文句でメリットを伝えてくるので、うまく乗せられてしまって「住所はどこ?」ということまで注意が回らなくなっているでしょう。

租税回避地にペーパーカンパニーを設立する理由

一般的にはタックス・ヘイブンにペーパーカンパニーを設立する理由は税金対策です。
今でこそパナマ文書などで誰が租税回避していたかが公になってしまいましたが、基本的に情報が漏れることなく秘密裏に租税回避ができていました。
また、法人の設立も容易でした。

ところが日本でも2017年に税制対策が行われ、租税回避を目的としたタックスヘイブンでのペーパーカンパニーに規制が入るようになりました。
これが「タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)」です。
事業利益の計上が事業実態のないペーパーカンパニーのものに該当する場合は、日本にある親会社の利益に合算して課税されます。

具体的には「現地に事務所が存在しない(登記だけはある)」とか「現地で事業活動を行なっていない」などです。
(事業実態があればこの限りではありません。あからさまに租税回避しているとみなされた場合に限ります。)

それでは詐欺師が租税回避地にペーパーカンパーニーを設立する理由はなんなのでしょうか?
ここからは個人的な見解になりますが、登記されているという事実を作るためなのではないかと推測しています。
勧誘の時に「タックスヘイブンの地域にある会社で投資をしている」と持ちかけているのですから、現地に登記されている必要があります。
見せかけ上の会社を演出するための手段としてペーパーカンパニーを作っているのではないでしょうか。

そして勧誘される側も、もし住所が示されているのならば「そこに会社があることは嘘ではない。」という認識になるので、騙されてはいないという思考の流れになりやすいです。

現地に会社の住所がそもそも存在していないと「頭から嘘」なので浅はかという感じですが、「少しの本当」を混ぜておくことで信用しやすくなるのです。

それが投資詐欺の詐欺師がタックスヘイブンの地域にペーパーカンパニーを作る一番の目的だと私は感じています。
そもそも現地に銀行口座を開設していない可能性もありますし、詐欺で集めたお金自体も現地に流れていない可能性もありますからね。

金融庁が認めた会社意外での取引はかなり危険を伴う

投資詐欺の勧誘で出てくる「投資を行っている会社」は高い確率で金融庁への登録や金融庁からの免許・許可が下りていません。
国内で金融取引の業務を行う場合はこの登録や免許・許可が必要になります。

まず投資の話を持ちかけられた際は、どこのどういう業者が取引をしているかを聞き出し、金融庁のホームページで業者一覧から探してみてください。
掲載されていなければアウトです。
教えてもらえなくてもアウトです。
「今はまだ登録準備中なので一般には出回っていない」などとする場合もアウトです。

実際に登録されている事業者を語って騙してくる場合は見分けるのが困難です。
その場合は話に出てきた取引事業者に、「◯◯という会社から投資の話を持ちかけられたのですが、そちらで◯◯という会社を通すことはありますか?」など問い合わせて確認することが必要になってきます。

金融庁からの注意喚起が各種出ていますので合わせてご確認ください。
https://www.fsa.go.jp/ordinary/chuui/chuui.html

そもそも国内において金融取引業を行ったり取り扱うためには登録・免許・許可が必要です。
それを無登録で行っていること自体が禁止されている行為です。
それは国内業者であっても海外の業者であっても同じです。

「あなただけ特別に、国内では登録はされていないけれど海外では認められている安心・安全な投資取引ができる会社」を謳い文句にしてくる場合もありますが「カモられている可能性が高い」と踏んだ方が間違いないです。
まずは一度落ち着いて考えて、自分だけで判断が出来なかったら冷静な判断ができる各所へ相談してみましょう。

まとめ

「タックス・ヘイブン」での会社の設立なども近年では規制が厳しくなってきています。
海外の投資であっても税金対策を行うのは今は非常に難しくなってきていますし、税金が掛からないということはありません。
現地に居住していれば話は変わってきますが、日本に住んでいて海外投資で得た利益には日本の課税対象になります。

投資詐欺における「税金がかからない」は尚更怪しさが膨れ上がります。
相手が言っていることを全て鵜呑みにするのではなく、「それ、本当に信じていいの?」と疑う心をしっかりと持ってください。
そして「怪しい」と感じたら、それ以上その話に耳を傾けないようにして「毅然とした態度で断る」ということが大切です。

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